韓国の生成AI利用率は40.6%、米国を上回る伸びの背景と統計の限界

2026年第2四半期、韓国で生成AI製品を利用した人の割合は40.6%と推計された。米国は33.0%、世界全体では18.8%だった。韓国は前四半期から3.5ポイント伸び、順位も16位から12位へ上昇している。
ただし、40.6%という数字は、韓国の国民を対象に直接質問したアンケート結果ではない。Microsoftが公表した2026年第2四半期のGlobal AI Diffusion資料は、匿名化して集計した製品利用データなどを基に、15〜64歳のうち報告期間中に生成AIを使った人の割合を統計的に推計している。
今回の結果からは、韓国で生成AIの利用が米国や世界全体より速いペースで広がっていることが読み取れる。一方で、この数字だけを根拠に「韓国では10人に4人が毎日AIを使いこなしている」「AIによって生産性が同じ割合だけ向上した」と判断することはできない。
要点
- 韓国の推計利用率は、第1四半期の37.1%から第2四半期には40.6%へ上昇した。
- 米国は31.3%から33.0%、世界全体は17.8%から18.8%へ伸びた。
- 韓国の上昇幅は3.5ポイントで、米国の1.7ポイント、世界全体の1.0ポイントを上回った。
- この指標が捉えるのは利用の広がりであり、頻度、習熟度、成果、安全性までは測っていない。
韓国と米国、第2四半期の違い

韓国と米国の利用率はいずれも上昇したが、伸び方には差があった。韓国の3.5ポイントという四半期上昇幅は、米国のおよそ2倍、世界全体の3.5倍に当たる。
Microsoftの説明によると、韓国は主要経済圏の中で、2025年後半から2026年第2四半期まで3回の連続した報告期間にわたり、最も大きな増加を記録した。直近約1年間の上昇幅は、およそ15ポイントとされている。
もっとも、40.6%は15〜64歳の4割が毎日AIを利用しているという意味ではない。対象となる生成AI製品を報告期間中に一度試した人も、仕事や学習で日常的に使う人も、同じ「利用者」に含まれる可能性がある。利用の裾野が広がったことは示せても、その定着度までは分からない。
利用率はどのように推計されるのか

Microsoft AI Economy Instituteは、広く使われている複数の生成AIサービスから得られる活動シグナルを匿名化し、集計したうえで国・地域別の推計値を算出している。さらに、端末やOSの構成、インターネットの普及状況、人口構成などの違いを調整する。
こうして作られる「AI User Share」は、特定サービスのアクセス数をそのまま比べるのではなく、国や地域をまたいで利用の広がりを比較しやすくするための指標だ。大規模な質問調査の実施を待たず、変化の速い生成AIの普及状況を比較的短い間隔で追える利点がある。資料では147の経済圏が共通の枠組みで扱われている。
公開されているMicrosoft AI Diffusionのデータと方法文書によれば、韓国の連続した推計値は25.9%、30.7%、37.1%、40.6%。米国は26.3%、28.3%、31.3%、33.0%となっている。単一時点の順位だけでなく、同じ方法による推移を確認できる点が重要だ。
その一方で、テレメトリを使う指標には観測範囲の限界がある。統計的な調整を加えても、新しく登場したすべてのサービス、企業内だけで使われるシステム、オフラインで動作するモデル、計測対象外の端末や利用環境まで完全に把握できるわけではない。対象製品や算出方法が変われば、推計値が改訂される可能性もある。
韓国の伸びが速い理由は何か
今回の資料は、韓国の上昇を生んだ原因を一つに特定していない。以下は原稿で示された韓国の利用環境を踏まえた可能性であり、3.5ポイントの増加に各要因がどれだけ寄与したかを証明するものではない。
モバイルと高速インターネットによる試しやすさ
スマートフォンや高速通信を利用できる環境では、特別な機器を購入しなくても、アプリやウェブサイトから新しいAIサービスを試せる。消費者向けサービスが広がる際のハードルは低くなりやすい。
ただし、アクセスしやすいことと、AIを深く活用して成果を得ていることは別の問題だ。通信環境が整っていても、利用頻度や結果の品質までは保証されない。
韓国語対応と既存サービスへの組み込み
グローバル企業と韓国企業のモデルが韓国語の文章、音声、文書を扱いやすくなり、検索、メッセージ、オフィス、教育、クリエイティブ分野のサービスにもAI機能が組み込まれてきた。英語で操作しなければならないという負担が小さくなれば、生成AIに触れる入口は増える。
学校や職場での素早い試行
学生や働く人が、要約、翻訳、文章作成、コーディング、情報検索の補助としてAIを試せば、一度でも利用した人の割合は増える。これは普及範囲の拡大を説明し得るが、その人たちが継続利用しているか、得られた回答の品質に満足しているかまでは示さない。
AIをめぐる社会的な関心
新製品の発表や業務自動化をめぐる議論が続けば、それまで使っていなかった人もサービスを試しやすくなる。強い関心は初期利用を促す可能性がある一方、その後も使い続けるかどうかは、料金、信頼性、実用性などに左右される。
米国より高いことが意味しないもの

米国の推計値が韓国より低いからといって、米国のAI産業や企業利用が韓国より遅れているとは結論づけられない。この指標は、AIへの投資額、先端モデルの開発能力、企業収益、社内システムへの導入状況、従業員一人当たりの生産性を測るものではない。捉えているのは、人口ベースで見た利用の広がりだ。
また、国全体の割合は国内の差を隠す。米国は地理的にも経済的にも規模が大きく、州、都市圏、農村部の間にはデジタル環境の違いがある。韓国は人口やネットワークが相対的に集中しているため、消費者向けサービスが短期間で広がりやすい条件を備えている可能性がある。
資料には利用目的に関する別の分析もあるが、これはGlobal NorthとGlobal Southにおける一部のCopilot会話を比較したものだ。韓国と米国を国別に直接比較した結果ではないため、学習、買い物、画像制作などの違いを両国固有の行動として読み替えることはできない。
この統計だけでは分からないこと
- 利用頻度: 一度だけ試した人と、毎日使っている人を区別していない。
- 利用の成果: 作業時間が短くなったか、品質が向上したか、誤りが増えたかは測っていない。
- すべての製品: 新しいツールや社内専用システムなど、観測対象に含まれない利用があり得る。
- 国民への直接調査: 国勢調査やアンケートではなく、テレメトリと統計調整に基づく推計である。
- 安全な使い方: 個人情報の保護、著作権の確認、回答内容の検証が行われたかは分からない。
- 増加の原因: 教育、政策、通信環境、料金、言語対応のうち、どの要素がどれだけ影響したかは分離できない。
数字を実用的に読み解くには
今後、韓国や米国、あるいは日本の生成AI利用率を見るときは、まず「利用者」の定義を確認する必要がある。報告期間中に一度使えば含まれるのか、月に一度なのか、毎日なのかによって、同じ利用率でも意味は大きく変わる。
次に、学校、職場、個人生活といった目的別の内訳や、年齢、所得、職業、居住地域による差を併せて見ることが重要になる。さらに、時間短縮などの利点だけでなく、誤った回答、プライバシー、著作権、費用負担といったリスクも同時に評価しなければならない。
企業や学校がこの数字を参考にする場合も、利用率を高めること自体を目標にするのは適切ではない。必要なのは、利用ルールを明確にし、出力を確認する力を育て、信頼できるツールを無理のない費用で使えるようにすることだ。普及の速さと、有益で安全な活用が広がる速さは同じとは限らない。
結論
韓国の40.6%という推計値は、生成AIが一部のテクノロジー愛好者だけのものではなく、より広い層へ急速に届き始めたことを示す強いシグナルだ。四半期の上昇幅と順位の改善は、Microsoftのデータ上、米国と世界全体のペースを上回っている。
しかし、この数字を「10人に4人がAIを使いこなしている」「国全体の生産性が向上した」と言い換えることはできない。次に注目すべきなのは、初回利用者の数だけでなく、利用の継続性、成果の信頼性、費用、そして恩恵がどのように分配されているかである。
同じ方法で更新される次回以降のデータを追いながら、利用頻度を尋ねる調査、学校や職場での利用実態、生産性や品質に関する研究と組み合わせて読む。それが、単一の順位や割合に振り回されず、生成AIの普及を実態に近い形で理解するための現実的な方法となる。
出典と利用について
本記事は、公開された報告書とデータに記載された数値、留保、測定範囲を照合し、日本語向けに独自の構成と表現で解説したものです。出典にある地図、グラフ、表、写真は転載していません。



