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非常に強いエルニーニョが発達中―2026~27年冬の見通しをどう読むか

2026-09-22 · その他 · 日本 · Zoogom編集部

#エルニーニョ#冬季予報#気候#季節予報#異常気象

暖かい赤道太平洋の海水と米国南部へ延びる低気圧経路を表した概念図

赤道太平洋で、エルニーニョのシグナルが急速に強まっている。NOAA Climate Prediction Centerが2026年9月10日に公表した診断では、2026年秋から2026~27年冬にかけて「非常に強い」エルニーニョとなる確率が90%を超えた。さらに、同年10~12月の強度指標が1950年以降の過去の事例を上回る水準に達する可能性も75%と評価されている。

ただし、これは特定の地域で記録的な大雨や高温、大雪が必ず起こるという予告ではない。エルニーニョは決まった日に上陸する台風のような現象ではなく、熱帯太平洋の海と大気が連動して変化し、季節単位で気流や降水の確率を動かす現象だからだ。

今回の公式情報から読み取れるのは、非常に強いエルニーニョへ発達する可能性が高まり、米国では南部を中心とする湿潤な冬のパターンが予測されているということだ。一方、日本を含む東アジアの実際の天候は、地域ごとの季節予報や短期的な大気の状態と合わせて判断しなければならない。

要点

海面水温だけでは決まらないエルニーニョ

エルニーニョの監視で中心となるのは、赤道中部から東部に位置するニーニョ3.4海域の海面水温だ。しかし、海が一時的に暖かくなっただけでは、海洋と大気が結び付いた本格的なエルニーニョとは判断できない。

通常は東から西へ吹く貿易風の弱まりや、熱帯の雲・降水域の移動、海面気圧と上空の風の変化なども確認する。こうした大気側の反応が海面水温の変化と連動すると、太平洋上のジェット気流や冬の低気圧経路にも影響が及びやすくなる。

NOAAの9月診断では、2026年8月のニーニョ3.4海域の海面水温偏差は約1.8℃だった。東部赤道太平洋の一部では平年を3.0℃以上上回り、下層と上層の風、対流活動、降水分布にも発達中のエルニーニョと一致する特徴が現れていた。

韓国気象庁のエルニーニョ・ラニーニャ情報も、同じ方向の変化を示している。2026年8月9~15日のニーニョ3.4海域の海面水温は29.6℃で、平年より2.7℃高かった。月平均偏差も5月の0.8℃から、6月は1.4℃、7月は1.7℃へ上昇している。

「過去最大級の可能性」は確率として読む

NOAAは通常の海面水温偏差に加え、RONIと呼ばれる相対海洋ニーニョ指数を使って強度を評価している。RONIはニーニョ3.4海域の水温を熱帯の海全体に対して相対的に捉え、熱帯域全体の長期的な昇温の影響を調整する指標だ。

NOAAによると、2026年10~12月の3か月RONIが基準を2.5℃以上上回る確率は75%とされる。この水準に達すれば、1950年以降の記録にある過去の強いエルニーニョを上回る可能性がある。

ここでいう「記録的」とは、気候指数の強度に関する表現である。世界各地で記録的な高温や豪雨、大雪が一斉に起きるという意味ではない。また、75%という数字は結果が確定したことを示すものでもない。現在の観測と複数の予測モデルを総合すると、その範囲に入る可能性が4回に3回程度と見積もられている、という公式な確率評価である。

米国の季節予報が示す地域差

NOAA Climate Prediction Centerの2026年9月17日付の長期季節予報解説は、特定の日の気温や雨量ではなく、3か月平均が平年より高いか低いか、降水量が多いか少ないかという確率を示している。

2026年10~12月の気温は、アラスカの広い範囲、ロッキー山脈以西の大部分、ミシシッピ川以東のほぼ全域、北中部の一部で平年より高い可能性が優勢とされた。南東アラスカ、グレートベースン北部、ノースダコタ州からミネソタ州北西部周辺では、その確率が50%を超える地域もある。

降水については、南カリフォルニアからフォーコーナーズ地域、グレートプレーンズ、ミシシッピ川・テネシー川流域、南東部、大西洋岸中部へと続く南寄りの地域で、平年より多い可能性が示されている。メキシコ湾東岸と南東部沿岸の一部では、10~12月の確率が60%を超える。

冬の中心期から春先にかけては、南部の湿潤傾向がさらに明瞭になる見通しだ。カリフォルニア沿岸付近では平年より降水量が多い確率が50~60%程度、ジョージア州南部やフロリダ州北部の一部では70~80%に達する期間がある。

ただし「降水量が多い確率70%」は、70%の日に雨が降ることでも、雨量が70%増えることでもない。3か月の合計降水量が、過去の記録を三つの区分に分けた際の「多い」側に入る確率を示している。

降水量が多くても大雪とは限らない

エルニーニョによって低気圧が通りやすくなっても、降るものが雨になるか雪になるかは、その時点の地上付近と上空の気温で変わる。季節全体が平年より暖かくても、短期間の寒気流入によって大雪になることはあり得る。反対に、湿った冬でも低い土地では雨が中心となり、積雪が増えない場合がある。

米国西部では、降水量の合計だけでなく、山地に雪として蓄えられる割合や雪線の高さも重要になる。比較的暖かい大気の川による降水が続けば、雨水の流出や洪水のリスクが高まる一方、春に利用できる積雪量が同じように増えるとは限らない。

この点は日本で季節予報を読む際にも参考になる。ただし、米国の予測結果を日本へ直接当てはめることはできない。エルニーニョは世界規模の背景条件だが、日本の気温や雨・雪は、東アジアの気圧配置や寒気の南下、周辺海域の状態、短期的なジェット気流の位置にも左右されるためだ。

典型的なパターンを弱める要素

今回の状況を、1982~83年、1997~98年、2015~16年の強いエルニーニョと単純に重ねることにも注意が必要だ。NOAAによると、過去の三つの事例では太平洋十年規模振動(PDO)が正の状態だったのに対し、2026年8月のPDO指数はマイナス1.11だった。

負のPDOは、地域によって典型的な強いエルニーニョの影響を弱める可能性がある。また、アラスカ湾に暖かい海水が通常とは異なる形で分布していることも、過去の一冬をそのまま今回の予測図として使えない理由に挙げられている。

過去の事例は、エルニーニョが気流へ影響する仕組みを理解する材料にはなる。しかし、北太平洋の海面水温や海氷、長期的な昇温、そのほかの大気循環まで毎回同じになるわけではない。

日本の読者が確認したいこと

今回の情報を日本で実用的に使うなら、エルニーニョの強度だけで冬を決めつけず、予報の時間軸を分けて追うことが重要だ。

  1. ENSOの月次診断で、海と大気の結合が続いているかを確認する。
  2. 日本向けの季節予報で、月ごとの気温と降水量の確率を見る。
  3. 2週間程度の見通しで、暖気や寒気が入りやすい時期を絞り込む。
  4. 大雪、寒波、大雨などへの具体的な対応は、直前の地域予報や警報・注意報に基づいて決める。

季節平均が高温寄りでも、短い寒波への備えは必要になる。農業では平均気温だけでなく、低温の時期、日照、過湿、生育段階を分けて見る必要がある。エネルギー面でも、冬全体の暖房需要と、一時的な寒波による最大需要は別の問題として扱うべきだ。

実用的な結論

2026年の熱帯太平洋では、海面水温、風、雲、降水がそろってエルニーニョの強まりを示している。NOAAが非常に強い現象となる確率を90%超としたことは、季節的なリスクの変化を無視できない段階に入ったことを意味する。

一方、「非常に強い」という分類だけから、日本が暖冬になる、大雪が増える、あるいは特定の農産物価格が上がると断定することはできない。米国の公式予報が示す南部の湿潤傾向も、米国内の地域別確率であり、日本の天候予測ではない。

実際の備えに役立つのは、エルニーニョを冬全体の背景情報として受け止めたうえで、季節予報、月単位の見通し、短期予報を順番に重ねることだ。注目すべきなのは現象の呼び名ではなく、気温や降水の確率が、どの地域のどの時期に変化しているかである。

出典と利用について

この記事は、上記機関が公表した観測値、確率予報、留保事項を照合し、日本の読者向けに独自の構成と文章で解説したものです。各機関の写真、地図、グラフ、図表は転載していません。エルニーニョに伴う影響は確率的な見通しであり、個別の気象現象について原因や発生を断定するものではありません。

出典: NOAA Climate Prediction Center · 独自の画像・図版を含みます